放射線治療科
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骨転移の放射線治療について
はじめに
骨はがんが転移を生じやすい臓器の一つで,多くのがんが進行すると骨転移を起こします。骨転移は痛みを伴うことが多く,がんの痛みの最も大きな原因です。また,転移を起こした骨はもろくなり骨折しやすくなります。背骨に転移した場合には脊髄を圧迫して神経麻痺を起こすこともあります。骨転移は遠隔転移のひとつであり抗がん剤やホルモン療法などの全身療法が治療の中心になりますが,病巣を縮小させて早期に症状を改善する方法として放射線治療は最も有効な方法です。骨転移に対する放射線治療には,病巣部に外部から放射線を照射する外部照射と注射によって体の内部から放射線を照射するラジウム治療があります。
外部照射について
(1)目的と対象
骨転移による痛みを軽減させることが治療の主な目的になります。症状がない場合でも今後,痛みが出る可能性がある病変,脊髄など神経を圧迫している病変,骨折を起こしやすい病変などは放射線治療の対象になります。全身のどの部位に病変があっても治療は可能です。
(2)治療方法
症状の原因となっている骨転移の病変に対して体の外部から放射線を照射します。1回の照射時間は数分間程度です。治療の回数は,病変の部位や範囲や患者さんの状態によって異なります。通常5~10回程度で行いますが,1回のみで行う場合もあれば20回程度で行う場合もあります。当院では,骨転移の治療に対してもなるべく放射線を病巣部に集中させ正常組織への線量が少なくなるようにしています。
(3)効果と副作用
約80%の患者さんで痛みの軽減が得られます。完全に痛みが消失することもしばしばあります。ただ,効果が出るまでには治療開始から2~4週間程度の時間を要します。副作用は治療部位や範囲や治療方法によって異なりますが,放射線の骨への影響は少ないため通常は軽度です。頸椎や胸椎への治療の場合は食道への影響による嚥下痛,腰椎や骨盤への治療では腸への影響による下痢や食欲低下が生じることがありますが一時的です。
(4)治療例
治療前(上腕骨に転移による破壊像)
治療後6ヶ月(破壊部位の骨の再生)
ラジウム治療について
(1)本治療の特徴と対象
ラジウム223という放射線を出す薬剤を注射する治療です。がんの骨転移部分に集まり病巣部に放射線を照射します。対象はホルモン治療の効果がなくなった前立腺がんの患者さんに限られます。投与方法は静脈注射で,月に1回の合計6回行います。
(2)効果と副作用について
治療効果が出ると骨転移による痛みが軽減することと,生存期間が延長することが報告されています。骨以外の病巣部に対しての治療効果はありません。副作用について主なものは,血液の中の赤血球,白血球,血小板の数の減少です。
(3)治療の注意点について
注射後1週間くらいの間は血液と尿の中に薬が残りますので,血液や尿の取扱いに注意する必要があります。
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