放射線治療科

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乳がんの放射線治療について

はじめに

乳がんに対する放射線治療の主な目的は手術後の再発を予防することです。次に述べるように乳房温存術後の場合と乳房切除術後の場合では治療の目的や方法が少し異なります。また,再発や転移を含めて乳がんの患者さんのいろいろな状況において放射線治療は行われます。当院では,最新の放射線治療技術を用いて,個々の患者さんにとって最適な放射線治療を行っています。当院において乳がんに対する放射線治療を行った患者さんの数は,2015年88人,2016年68人,2017年77人でした。

当院の放射線治療装置(リニアック)

乳房温存術後の放射線治療

(1)目的

乳房温存手術では,腫瘍とその周囲の乳腺のみを切除し,乳腺の大半を温存します。温存した乳腺に潜んでいる可能性のあるがん細胞を消失させて再発を予防することが放射線治療の目的です。乳房温存手術に放射線治療を加えることで,乳房を全て切除した場合と同じ治療成績が得られます。放射線治療を行わなかった場合に再発が生じる可能性は患者さんによって異なりますが,全ての患者さんにおいて,放射線治療を行うことで再発率を減少させることができます。

(2)対象

乳房温存手術を受けた患者さんの全てが放射線治療の対象になります。ただし,放射線治療を行わなくても再発を生じる可能性が非常に低い場合,放射線治療を省略することも可能です。(年齢が70歳以上,腫瘍の大きさが2cm以下,切除範囲に十分な余裕がある,ホルモン療法の効果があるタイプ,などの条件を全て満たす場合などは省略が可能です。)

(3)方法

放射線治療の範囲は手術を受けた乳房全体で,斜めの2方向より治療します。治療中は放射線治療室の治療台の上で約10分間安静にして頂きます。治療中に痛みや熱感を感じることはありません。月~金,毎日1回,合計25回の治療を行います。治療線量は1回2Gy (グレイ) で,合計線量は50Gyです。

右乳がんの場合の照射範囲(灰色の部分)

断面の図(足側から見たもの)

(4)ブースト照射について

乳房全体への放射線治療後に腫瘍の存在した部分の周囲のみに放射線を追加することをブースト照射といいます。ブースト照射を行う場合は,乳房全体の25回の治療後に5回のブースト照射が追加され,合計の治療回数が30回となります。ブースト照射を行うかどうかは,病変の大きさや切除範囲や年齢などにより決めます。

円の部分のみが照射範囲

(5)リンパ領域への治療について

乳房周囲のリンパ節に再発リスクがある患者さんに対しては,乳房と同時に腋の奥から鎖骨周囲のリンパ節に対して放射線治療を行います。乳房は前述の様に斜めの2方向から治療し,リンパ節に対しては斜め前方から治療を行います。通常,手術時に切除したリンパ節に転移が認められた患者さんが対象となります。

乳房の上方の四角がリンパ節への照射範囲

(6)短期照射について

短期照射法とは,1回の線量を増加させて治療回数を減らす放射線治療の方法です。海外からは,短期照射の長期的な治療結果として,効果と副作用が標準的な治療方法と全く差がないことが報告されています。最近では,日本国内でも多くの施設で短期照射法が行われております。短期照射法では,1回2.66Gyの照射を16回,合計42.56Gyの放射線治療を行います。合計線量が標準の50Gyに比べて少なくなっていますが,1回線量を増加させると放射線の効果は増強するため,全体の治療効果は標準の方法と同等です。ブースト照射を行う場合は,4回のブースト照射が追加され,合計20回,53.2Gy の治療となります。放射線の照射範囲や照射方法は標準の方法と全く同じです。

短期照射の利点としては,通院が通常25回必要なところが16回で済むことです。ブースト照射を行う場合は,通常30回のところが20回で済みます。短期照射の欠点としては,実質的な欠点はありませんが,治療経験が標準的な方法に比べると多くなく,国内では,長期的な結果が十分には確認されていないことです。また,がん保険の中には,放射線治療の線量が50Gy以上の場合にのみ保険金が支払われるものがあり,この場合,短期照射では保険金の支払いを受けられないことがあります。以上の状況で,当院においては,患者さんの希望に合わせて短期照射法を行っています。なお,リンパ領域への治療も行う場合は短期照射を選択する事はできません。

(7)抗がん剤やホルモン剤との併用について

抗がん剤と放射線を同時に行うと副作用が増強する可能性があるため,抗がん剤治療と放射線治療は別々に行います。一般的には抗がん剤治療が終了した後に放射線治療を開始します。ハーセプチンについても放射線治療との同時治療は避けた方がよく,照射期間中は通常ハーセプチン治療は休止します。なお,ホルモン治療については放射線治療と同時に行っても問題はないとされています。

(8)放射線治療の副作用について

基本的に放射線治療の影響は治療部位にのみ生じ,全身への影響はありません。主な副作用は治療部位の皮膚の炎症(発赤や痒み)です。この皮膚の炎症は放射線治療開始後3~4週間頃から生じ,そして治療終了後,数週間程度で消失します。皮膚の軽度の着色や乾燥はその後もある程度残りますが,数ヶ月~数年で徐々に消失していきます。その他のまれな副作用として放射線による肺の炎症があります。100人に1~2人程度の確率で発生し,放射線治療終了数ヶ月後に,咳や発熱を認め,投薬治療を要することがあります。リンパ領域への放射線治療を行った場合はまれに腕のリンパ浮腫を生じることがあります。

(9)その他

治療期間中の日常生活に特別の制限はありません。安静にする必要はなく,食事の内容についても制限はありません。入浴も可能ですが,治療位置を示すしるし(線)を皮膚に付けますのでしるしを消さないように注意をして頂きます。

(10)治療成績

2008年4月~2016年3月に当院で乳房温存手術と放射線治療を行った患者さん330人(0期55人,1期162人,2期107人,3期6人)についての治療成績は,5年生存率97%,5年乳房内再発率1%でした。

乳房温存術後の放射線治療

(1)目的

乳房をすべて切除する手術を行った後で,手術部周囲の胸壁やリンパ節への再発を予防することが治療の目的です。これらの部位への再発は疼痛や出血や上肢の浮腫など種々の症状の原因となるため,これらの症状の出現を避けることが目的です。また,これらの再発を予防することは,長期的には生存率を向上させることになります。

(2)対象

乳房切除術を受けた患者さんのうちで,胸壁やリンパ節への再発のリスクが高い方のみが治療の対象になります。手術前の腫瘍が大きい場合や皮膚や乳房の奥の筋肉に広がっていた場合,そして切除したリンパ節の中で複数個の転移があった場合などです。手術前に抗がん剤治療を受けた患者さんについては,抗がん剤治療を始める前の状態をもとに適応をきめます。

(3)方法

手術後に抗がん剤治療を行う場合は,抗がん剤治療が終了した後に放射線治療を行います。放射線治療の範囲は手術を受けた手術創部周囲の胸壁と腋の奥から鎖骨周囲のリンパ節です。胸壁は斜めの2方向から治療し,リンパ節に対しては斜め前方から治療を行います。治療中は放射線治療室の治療台の上で約10分間安静にして頂きます。治療中に痛みや熱感を感じることはありません。月~金,毎日1回,合計25回の治療を行います。治療線量は1回2Gy(グレイ)で,合計線量は50Gyです。

乳房の上方の四角がリンパ節への照射範囲

(4)副作用

基本的に放射線治療の影響は治療部位にのみ生じ,全身への影響はありません。主な副作用は治療部位の皮膚の炎症(発赤や痒み)です。この皮膚の炎症は放射線治療開始後3~4週間頃から生じ,そして治療終了後,数週間程度で消失します。皮膚の軽度の着色や乾燥はその後もある程度残りますが,数ヶ月~数年で徐々に消失していきます。その他,手術と放射線の両方の影響により腕のリンパ浮腫を生じることがあります。また,まれな副作用として放射線による肺の炎症があります。100人に1~2人程度の確率で発生し,放射線治療終了数ヶ月後に,咳や発熱を認め,投薬治療を要することがあります。

(5)その他

治療期間中の日常生活に特別の制限はありません。安静にする必要はなく,食事の内容についても制限はありません。入浴も可能ですが,治療位置を示すしるし(線)を皮膚に付けますのでしるしを消さないように注意をして頂きます。

(6)治療成績

2008年7月から2015年3月に当院で乳房切除手術後の放射線治療を行った乳がんの患者さんは41人でした。5年生存率は86.8%で,放射線治療を行った部位の5年制御率は95.0%でした。

再発や転移に対する放射線治療

(1)対象と目的

手術後の胸壁や乳房周囲のリンパ節への再発のうち手術の適応にならない場合や手術後の再度の再発を予防する場合に放射線治療は有効です。また,離れた部位に転移がある場合にはホルモン療法や抗がん剤治療が治療の中心になりますが,転移巣による症状があるときに症状を緩和する目的に放射線治療は有効です。特に疼痛が生じやすい骨転移や神経症状が生じやすい脳転移に対して放射線治療はしばしば行われます。

(2)方法

治療方法は病変の範囲など個々の患者さんの状況により異なります。

(3)効果と副作用

病変が限局している場合は腫瘍を完全に消失させる可能性があります。骨転移などの病変により疼痛などの症状がある場合,80%程度の患者さんで症状の軽減が認められます。骨転移と脳転移に対する治療については,骨転移の放射線治療,脳転移の放射線治療,の項目を参照ください。

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