胃がん
外科治療
胃がんは欧米に少なくアジアに多いがんであり,以前より日本がその診断治療においてリーダーシップをとってきました。2001年3月に日本胃癌学会は治療ガイドラインを作成し,胃がん進行度に応じた治療法が選択されるようになりました。当院においてもガイドラインに沿いつつ,内視鏡治療適応外である胃がん(早期がんだけでなく進行がんを含める)に対して,可能な限り低侵襲な腹腔鏡下胃切除術もしくはダヴィンチによるロボット支援手術を行っています。また個人の状態や残胃がん,拡大リンパ節郭清が必要な場合は,安全を考慮して開腹手術を行うこともあります。(図中のTは胃がんの深さ,Nはリンパ節転移,Mは遠隔転移を意味しています。詳細は胃がんについてを参照ください。)
当院における胃がんの治療方針(外科手術)
資料:胃癌治療ガイドライン 第6版 より引用・改変
開腹手術
腹腔鏡手術
ロボット支援手術
主な術式と再建法
がんの存在部位や進行度により,胃切除の範囲ならびにリンパ節郭清範囲が変わります。再建法が異なります。
①幽門側胃切除術:胃下部-胃体部がん
Billroth I法再建:病変が前庭部
Roux-en-Y法再建:病変が胃体部
②胃全摘術:胃上部あるいは多発胃がん
Billroth Roux-en-Y法再建
③噴門側胃切除術:胃上部-食道胃接合部がん
食道残胃吻合(mSOFY法 観音開き再建法):食道浸潤なし-軽度
mSOFY法
観音開き再建法
ダブルトラクト法:食道浸潤高度
術後のフォローアップ
術後は再発や二次がんを早期発見するため,定期的に外来を受診していただき,上部消化管内視鏡やCT検査を行います。また,体重減少や下痢など胃切除に伴う障害(胃切除後障害)への対応,栄養管理を行います。通常,5年間のフォローアップ期間があります。
術後補助化学療法
Stage Iの胃がんは再発の可能性が極めて低いため,追加治療は行っていませんが,Stage II,IIIでは再発する可能性があり,追加治療が推奨されています。追加治療のうち,体内に残っているかもしれない目に見えないがん細胞を抗がん剤で抑え再発を未然に防ごうという治療のことを術後補助化学療法といいます。Stage IIに対してはティーエスワン®の内服を,Stage III症例に対してはティーエスワン®の内服または5-FU系抗がん剤(ティーエスワン®またはゼローダ®)と注射薬(ドセタキセル®またはオキサリプラチン®)の併用療法を,術後の全身状態を考慮し選択して行っています。
症例数
2020年以降,新型コロナウイルス感染症による影響から,当院でも胃がん手術症例数の減少を認めましたが,2022年に入り手術件数も少しずつ戻りつつあります。当院の特徴としては,低侵襲の腹腔鏡手術に力を入れており,年々割合が増加しています。2023年4月よりロボット手術を開始しており,さらに低侵襲手術が増加するものと予測しています。当院の入院期間の幽門側胃切除で12.7日(全国平均17日),胃全摘で12.8日(全国平均21日)であり,早い社会復帰が見込まれます。
Topics
今後,胃癌の罹患率はさらに減少することが予想される一方で,その治療内容は高度化・多様化・専門化してきています。このような現状を踏まえ,今後も質の高い胃癌治療を広く社会に提供する目的で2023年に発足した日本胃癌学会の施設認定制度において,当院は日本胃癌学会認定施設(A)に認定されました。認定施設(A)では胃癌登録を行っていること,迅速病理・細胞診などの診療体制を有すること,胃癌学会会員,消化器外科学会,消化器内視鏡学会,臨床腫瘍学会,病理学会などの専門医の常駐,さらに学会参加・発表などの学術実績,外科手術,内視鏡切除,化学療法の診療実績がまんべんなく行われていることが条件として求められています。引き続き,地域の胃がん治療の中核病院として,患者さんを中心とした,体に優しく高い根治性を目指した最新の治療を提供していきます。
2023年度よりダヴィンチによるロボット支援手術を開始しました。ロボット手術の何よりの利点は,鉗子の関節がヒトの手のように自由に動き,従来の腹腔鏡手術のような動作制限がない点や,手ブレ防止機能や高精細3D画像により,腹腔鏡手術よりも繊細な動作が可能な点です。胃がんにおいては腹腔鏡手術と比較し合併症(膵液瘻など)を低減されることが報告されており,よりきれいな切除ができることが期待されています。
生活様式の変化による若年者のヘリコバクターピロリ感染率の低下により,胃がんの罹患率や死亡率は減少傾向にあります。しかし,内訳をみると75歳以上の高齢者の割合が非常に高くなっています。そのような現状で,高齢者でも負担の少ない腹腔鏡手術・ロボット支援手術を積極的に行い,ADLを極力落とさないように取り組んでいます。
日本における胃癌の数
資料:国立研究開発法人国立がん研究センター
- 外来診療時間
-
午前8時30分~午後5時15分
※初診の方はかかりつけ医の
紹介状を持参してください。
※予約の無い方の受付時間
午前8時30分~午前11時
(予約のある方の後での診療に
なります)
※診療科によっては受診できない
場合があります。
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15時~20時まで(平日)
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