肺がん

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肺がんの手術療法

手術適応について

当院での肺がん手術症例は年々増加の一途をたどっていますが,非小細胞癌の場合には通常はI期とII期(早期肺がん)とIIIA期の一部(進行肺がん)が,小細胞癌の場合はI期などの極めて早期の場合が手術の対象となります。

手術方法について

当院の肺がん手術は基本的に胸腔鏡下手術による低侵襲手術であり,手術創も小さく早期回復が期待できます。平成23年度の肺がん手術症例は80例でしたが,そのうち77例が胸腔鏡下手術(96%)で,3例が開胸手術(4%)でした。

(1)胸腔鏡下手術とは

1.5cm程度と6~8cm程度の2箇所の創から胸の中に胸腔鏡(内視鏡)を挿入した後,モニターを観ながら(テレビの画面に胸の中が映し出されます)行う手術です。痛みの原因となる胸壁の筋肉・神経の損傷が少なく,術後の創部痛が開胸手術に比べはるかに軽減されます。体表の傷が小さい低侵襲手術ですから,早期離床が可能で早期退院が期待できます。

(2)開胸手術とは

胸腔内の高度な癒着や手技的が困難と判断された症例に対しては,6~8cm程度の創を12~15cm程度に延長・拡大して開胸手術を選択します。

肺の切除範囲について

手術は腫瘍の占拠部位とその大きさで肺をとる範囲が異なりますが,術前に肺機能検査で術後の肺機能を予測した後,手術に耐えられるかどうかを判定して切除範囲(術式)を決定します。

(1)肺葉切除術

患者さんが切除に耐えられれば(手術後も十分な肺機能があるなら),“必要にして十分な”切除は腫瘍のある肺葉の切除と周囲のリンパ節を摘出(リンパ節郭清)する術式で肺がんの標準的な手術とされています。

上の図は右上葉の肺がんに対して右上葉切除術を施行したところですが,気管支の穴は自動縫合器(金属のホッチキス:ステープラー)で閉じます。肺を取ったあとの空間は,残りの肺が少し膨らむのと,横隔膜があがって残りの肺全体が膨らみ移動してその空間を埋めます。

(2)肺部分(楔状)切除,肺区域切除術

肺部分(楔状)切除術はスリガラス陰影を伴う高分化型の早期肺腺癌の場合や高齢の方で重度の肺気腫などで肺機能が十分でない場合に対しておこないます。また最近,画像診断の進歩とともに増えてきている1cm前後の小型の肺がんに対しては根治性を損なわない範囲で肺区域切除とリンパ節郭清の術式を選択することがあります。

(3)一側肺全摘術

腫瘍の進展状況によってはやむを得ず肺全摘術を選択せざるを得ないこともあります。

手術時間,入院経過について

手術時間は,標準的な肺葉切除であれば約2~3時間,肺部分(楔状)切除であれば約1時間で,いずれも輸血をしないことがほとんどです。術後約7日間で退院できることを目標にしており,平均入院期間は約10~14日前後となっています。

術後の肺機能について

肺切除をすれば,少なからず肺活量が減ることになりますが,肺葉切除であれば,ほぼ手術前に近い運動が可能で,ゴルフなどの軽い運動は問題ありません。ただし肺気腫などで手術前の肺機能が悪い方は,それに応じて運動制限が生じることがあります。さらに片側肺の全摘術を受けた場合には肺機能の低下により,手術のあと運動しにくい(息切れが生じる)人もあります。切りとる肺の大きさに応じて肺活量の低下は異なります。

手術成績について

平成10年度から平成23年度までの14年間の当院の肺がん手術症例は432例でしたが,14年間で術後30日以内の死亡例は1例(0.23%)のみで非常に良好な手術成績となっています(最新の日本呼吸器外科学会全国集計:術後30日以内の死亡率0.4%)。

さらに肺がん外科切除例の全国集計による病理学的別5年生存率の統計(J Thorac Oncol 2008; 3: 46-52より)によると,【1A期】83.9%,【1B期】66.3%,【2A期】61.0%,【2B期】47.4%,【3A期】32.8%,【3B期】29.6%,【4期】23.1%となっていますが,当院での平成23年度における肺がん外科切除例の病理学的別5年生存率(平成18年度の手術症例の多くは1期で手術)は,【1A期】85%,【1B期】66.7%と他の施設と違いはなく良好な結果が得られています。

さいごに

当院では肺がん術後(特に非小細胞癌IA期)の診療におきまして地域かかりつけ医の先生と連携して安全で質の高い医療を提供するために役割を分担しております。現在の病気の状態や治療方針などの情報やその診療計画につきましては広島県地域保健対策協議会・肺がん医療連携推進特別委員会により作られた「わたしの手帳」に記載して患者さんにお渡ししておりますので,術後はかかりつけ医との連携パスを活用して再発や転移に関する経過観察させていただければ幸いです。

外来診療時間

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※初診の方はかかりつけ医の
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 場合があります。
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