教えてドクター

このページを印刷する

1型糖尿病のインスリン自動制御治療の日は近い!?

こどもの糖尿病は1型が多い

糖尿病は1型,2型,その他の特定の機序,疾患によるもの,妊娠糖尿病の4種類に分類されます。2013年~2020年に当院小児科を受診した糖尿病155例のうち1型糖尿病が106人(65%)と最も多く,2型31人(19%),その他が24人(16%)でした。

1型糖尿病とは?

人の体の中で唯一血糖を下げるホルモンであるインスリンを作る膵臓のβ細胞が何らかの原因でほとんど破壊されたため,慢性的な高血糖状態になり,1型糖尿病がおこります。

世間一般に糖尿病といわれているのは2型糖尿病で,1型糖尿病は2型糖尿病とは原因がちがう別の病気です。

1型糖尿病の治療は?

膵臓で作れなくなったインスリンを注射で補う治療を行います。現在は主に2通りの注射方法が行われています。

ペン型注射器療法
ペン型注射器療法

インスリンポンプ療法
インスリンポンプ療法

当院では,小学生以下のこどもでは80%がインスリンポンプ療法を行っており,中学生以上は40%が行っています。食事の量,内容や運動量などによって血糖値は大きく変化するので,それに見合った量のインスリンをタイミング良く体に投与しなくてはなりません。簡単なことではないことが予想されます。こどもは大人より生活の変化は大きく,年々体が大きく成長するため,インスリンの量も増やしていく必要があり,大人より血糖値の調整は難しくなります。

持続血糖モニター(CGM)

糖尿病の状態を把握するために,血糖測定器という器械で血糖値を測ります。しかし,そのときの血糖値はわかりますが,その後の血糖値がどう変化するかはわかりません。そこで,持続血糖モニター(CGM)という方法が登場してきました。2020年現在は日本で3種類のセンサを用いて皮下の糖濃度を持続的に測定する器械が使えるようになりました。

日本で使用可能な持続血糖測定器

皮下の糖濃度が血糖値と同じではありませんが,それを利用して血糖値およびその変化を知ることができます。一例ですが,血糖測定値のデータは食前や寝る前の値は90~190mg/dlでまずまずのように見えます。しかし,CGMから得られるグラフを見ると,夜中は高血糖が見られ,朝食後の高血糖が明らかになります。

持続血糖モニター(CGM)をうまく利用すると血糖コントロールが良くなる

当科では現在インスリンポンプ療法を行っている50人中40人がCGMを使用し,注射器による頻回注射療法の40人中22人がCGMを使用しています。

罹病期間が2年以上の1型糖尿病患者さんで,リブレセンサ(isCGM)を1年間以上使用している16人の方々と血糖測定器のみを使用している17人の方々の1年間のヘモグロビンA1c(HbA1c)の改善を比べると,isCGMを使っている方々の方がより改善していたことがわかりました。同様な報告が外国でもCGMを用いた方がHbA1cの改善が明らかであることが示されました。

SAP(sensor-augmented pump)による基礎インスリン量の調節の時代に

CGMのデータがインスリンポンプに飛んで画面に表示され,低血糖や高血糖の確認を行うことができ,かつアラート機能も備えているSAPを使っている方が2020年現在,50人中20人います。

低血糖になる前に基礎インスリン注入が自動で止まり,その後血糖値が上昇してくると自動で注入が再開する機能を有するインスリンポンプが現在使われています(①)。米国では食後の血糖上昇に対して基礎インスリン注入量が自動で増加し,血糖値が下降してくると,自動で減少してくる機能を有するインスリンポンプが使用されています(②)。日本でも2022年から,このインスリンポンプを使用可能となり,2023年2月現在,20人使用中です。

このような自動制御機能により,センサ値が70~180mg/dlになる時間の割合(TIR;Time in range)が増えることになります。2019年にTIRに関する国際コンセンサスが発表され,TIR70%がHbA1cで約7%と強く一致することから,TIR70%が推奨されました。今後はセンサの改良により,センサ値の精度が上がり,インスリンポンプのプログラムの改良と合わせて,TIR85%以上を目標に開発が進んでいます。

CGMの精度向上, 皮膚トラブルの回避が患者さんの生活の質(QOL)を高める

センサ値は測定値と同じ値ではなく,センサ値は10分程度前の値であることを注意するとともに,センサ値と測定値の乖離の程度(センサ値の精度)が重要です。日本で使われているセンサはまだ満足する精度ではありませんが,さらに精度が良くなったセンサが国内でも使える日は近いようです。そうなるとますます血糖コントロールは改善されると思われます。

しかし,腕やお腹などにセンサを1~2週間つけっぱなしになるため,皮膚のかぶれやかゆみに悩ませられています。注射器やインスリンポンプでも針を刺すので皮膚のケアは今後ますます重要になります。最近は皮膚科医に時々皮膚の状態を診察していただいています。

《広報誌「もみじ142号(2020.12)」に掲載した内容を再編集しました(2023.3)》

外来診療時間

午前8時30分~午後5時15分

※初診の方はかかりつけ医の
 紹介状を持参してください。
※予約の無い方の受付時間
 午前8時30分~午前11時
(予約のある方の後での診療に
 なります)
※診療科によっては受診できない
 場合があります。
 ≫≫手術日の注意[PDF]
 ≫≫外来診療担当医表
休診日
土曜,日曜,祝日,年末年始
(12月29日から1月3日)
面会時間
11時~13時まで(平日)
15時~20時まで(平日)
11時~20時まで(土・日・祝日)

〒734-8530
広島市南区宇品神田一丁目5番54号
TEL(082)254ー1818(代表)

①⑦⑤番

「県病院前」下車徒歩3分

広電バス 12号

「県病院前」下車徒歩1分

まちのわループ 301,302

「県病院前」下車徒歩1分