鼠経ヘルニア関連疾患について
小児の鼠径部の腫脹,また男児の陰嚢が腫脹する,痛みがある等の主訴で当科を紹介される患児は多くを占めます。その多くは鼠径ヘルニアですが,そのほかには精系水瘤,精巣水瘤(陰嚢水腫),精巣炎,副精巣炎,精巣回転症,精巣腫瘍,リンパ管腫,鼠径部脂肪腫,大腿ヘルニア等の鑑別診断が必要です。
鼠径ヘルニアの診断と鑑別診断は理学的所見でほぼ可能ですが,最近は超音波検査(エコー)を併用して確実な診断とヘルニア内容の確認も行っています。またエコーは特に腫瘍性病変の診断,ドップラーを併用して急性陰嚢症の鑑別診断等にもかかせない検査です。
疾患により治療方針が異なりますので確実な診断をするように心がけています。治療は手術的治療が多くを占めますが,まず鼠径ヘルニアは創痕が目立ちにくいように陰嚢皮膚からアプローチしています。急性陰嚢症は迅速に診断し,精巣回転症の否定を行えれば保存的に加療しますが,精巣回転症は緊急手術を要します。腫瘍のうちリンパ管腫は硬化療法を行い,創痕なき治癒を目指しています。
また鼠径部ではありませんが臍ヘルニア(でべそ)も年齢によっては保存的治療を試みています。