肝臓がんの診断と内科的治療
国民病といわれたB型肝炎、C型肝炎は、これまで肝臓がんの主な要因となっていましたが、近年、これらの肝炎ウイルスに対する抗ウイルス療法は飛躍的に進歩しております。しかし、未だ、自らが肝炎ウイルス陽性者であることを知らない患者さんや、肝炎ウイルス治療後に十分なフォローアップを受けず、進行した肝臓がんで発見される患者さんもたくさんおられます。また、最近、B型肝炎、C型肝炎いずれも陰性の肝臓がんが世界的に増加傾向にあり、その患者さんの多くは、糖尿病、肥満、脂質異常症、脂肪性肝疾患などを合併していることがわかってきました。今後、これらのいわゆる生活習慣病の患者さんを対象とした肝臓がんスクリーニングを行っていく必要があります。
現在、肝臓がんに対する治療法は、肝切除、局所壊死療法(ラジオ波焼灼療法、マイクロ波凝固療法)、放射線療法、経カテーテル療法(肝動脈化学塞栓術、肝動注療法)、薬物療法、肝移植と、極めて多岐にわたっています。特に、最近の薬物療法の進歩はめざましく、進行した肝臓がんの治療成績も大きく向上しております。このように、肝臓がん診療では、内科、外科、IVR、放射線科、臨床腫瘍科、さらに栄養療法や生活習慣病に対する対策など、多くの診療部門との密な連携のもとでの継続的な集学的治療が極めて重要になります。
私は、平成4年広島大学を卒業、平成15年広島大学大学院を修了し、以後、広島大学で肝疾患、特に、肝臓がんの診療、研究、学会等での社会活動に取り組んで参りました。広島県は、肝炎、肝臓がんの患者さんが特に多い地域として知られています。引き続き、肝疾患患者さんの予後の改善に少しでも貢献できるよう、努めて参りたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。